定年を間近に控えて、私は密かにある計画を巡らせている。
これまでの四十年近くを猛烈に働いてきた。それなりに充実した実績をあげたと思う。だが五十代になると、こどもの教育と家族の扶養に追われ、自分の好きな仕事を求めて転職することもできず苦し日々であった。
しかし、ありがたい事に、もうこれ以上あくせくと働かなくても良い定年がやってくる。わずかだが年金も入りなんとか生活できる。二人の子供たちは一応大学卒業までの目処も立ててやり、家内は自分に合った仕事に専念して定年まで未だ十年余りある。
いつか、ゆっくり自分の気の向くままに一人で世界旅行をしたいと夢見ていた。
最初に行く中国旅行に備えて、日常会話程度はこなせるようにした。中国では「三国志」の史跡を辿りながら、一年ほど各地を巡る。その後、自転車でアジアハイウェイを通るサイクリングの旅に出る。ベトナムを南下し、カンボジアを抜けラオス国境を越え、ビエンチャン経由でタイに渡る。タイ北部チェンマイからミャンマーに到着し、アジアハイウェイのサイクリングは終了する。
この後、シルクロード探検隊に合流し、北回りのシルクロードを辿り、かって中東のオアシスのあったシリアのパルミラを目指す。このシリアを根拠地にして、中東の国々で「聖書の史跡」の旅をする。シリアからは中世の十字軍の辿った陸路を、逆方向にトルコ、イランを経てギリシャに到る。ここからはヨーヘン・ガールダの「ソフィーの世界」を携えて、ヨーロッパを「哲学とメルヘンの旅」をする。
アメリカ大陸へ船で渡り、車で大陸横断、メキシコへ南下し、南米の国々をグラハム・ハンコックの「神々の指紋」を辿り、マヤ文明の遺跡を訪ねるのだ。
この壮大な計画を実行するため現在密かに世界中にインターネットの友達網を構築中である。
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