毎年、年末になるとアルペン・カレンダーを買う。山と渓谷社が愛好家から募集した傑作の山の写真を五十数枚載せている。週間のメモ欄を捲ると、その季節の素晴らしい山の景色が現われる。
仕事で旭川医大を訪れたのは七月下旬の金曜日だった。午前中で仕事を終えると、かねてからY教授に勧められていた、大雪山に登るため、天人峡温泉までタクシーを飛ばした。この温泉郷では昨日、子連れの羆が道路を歩いていたと言う。
翌日は快晴だった。鬱蒼とした木々の茂る山道を通る時は、羆を警戒し緊張した。頂上に近づくと、高山植物のお花畑が広がり、一面岩の織り成す斜面に辿り着くと登山者もちらほら見えた。
旭岳の山頂に着いたのは昼過ぎだった。頂上には旭岳温泉等からこの山頂に辿り着いた登山者が、登頂の感動を確認し合っていた。先着の七八人の男女のグループに話し掛けた。東京から来たと言うワンダーフォーゲルの一行で、函館から層雲峡を経て、この宿願の旭岳頂上に到達したという。
私はこれから午後四時過ぎの層雲峡に下るリフトに間に合うように、この山頂を縦走する。お互いの安全を祈って別れを告げた。間宮岳に向う下り道には、右方眼下に緩やかな雪渓が見えた。登り道を数人の登山者がやってきた。なかに黒熊のように顔面髭だらけの肥満体の男がしんどそうに登っていた。お互いの視線が合った時、二人が叫んだ、「クマゴロウじゃないか!」
「トミさん!」
会社の営業部にいる同僚で、頂上のグループに遅れて着いたのだ。
フロアは違うが私と同じ池袋の高層ビルにいる同じ会社の社員だった。お互いに道を急ぐため数秒の交歓だった。
このアルペン・カレンダーの日本百名山は、まだ二十足らずしか登っていないが、次はどこにしようかと思案する。
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