青葉の季節

 

新緑の季節、鈴鹿山脈で花の美しい御池岳に登った。

三岐鉄道終着駅の西藤原駅で下車。坂本谷の沢に沿って、車の轍のついた草道を十分程歩くと、沢は十メートル程の滑滝になる。一昨日までの雨のせいで滝に流れる水も豊富である。

林道が終わると、細い急な登山道に変わる。やがて沢の水が涸れ、岩の露出した沢道になる。石灰岩の多いこの山では、沢の岩が水で侵食され、所々に自然の彫刻のドリーネ(すり鉢穴)を型造っている。

十一時、坂本谷を出発してから二時間、ブナと楢の林のなだらかな稜線を下降し滋賀県境の白船峠に着く。ここで休憩していると、中年の男性が藤原岳の道から下ってきた。挨拶を交わすと、そのまま真の谷へ下った。誘われるように腰を上げ、私も同じ方向に向う。

小鳥の声が響き渡る林道を下ると、真の谷に出る。新緑のシダが束をなしてあちこちに茂っている、沢では澄み切った水が静かに音をたてて流れている。ふくろうだろうか、バリトンの良く通る鳴き声が谷に響き渡る。カエデ林の下ではユリ科のバイケイソウが広い葉をひろげて、真っ直ぐにとうを立て莟をつけている。もう二週間もすると、この莟が白い花を一斉に開花するだろう。

十二時半、御池岳の頂上、1,248メートルの丸山の頂上に到着。鈴鹿山系の最高峰だ。快晴の時には鈴北岳や藤原岳も望めるが、今日は霞んで見えない。

背丈よりも高い熊笹の道を分け入って、近くの見晴らしの良いボタンブチに寄る。対面の山々を谷越しに見渡す、一大パノラマを展開している。

帰途、坂本谷の冷たい沢水で顔を洗い、汗まみれの下着を着替える。四時半、坂本谷の出発点に到着した。

花の季節を過ぎた新緑の御池岳は、丁度花の端境期であったが、青葉を満喫する爽快な一日であった。

多明功、97/6/1

 

UpBackHome

Copyright© Polyglot Plaza 1997. All Right Reserved.
Updated February 28, 2002