グアダルーペ島

 

カリブ海に浮かぶ小さな島グアダルーペは、れっきとしたフランス領でありる。かってアフリカ人奴隷の検疫を行うための島であった。産業は砂糖黍、バナナ等の農産物と観光で成り立っている。

この島から日本にやってきた宗教団体の信者の一行を案内する事になった。十日間の観光コースは、伊勢志摩を経由して奈良、京都を訪ね、高速道路を通って鎌倉、東京を廻るものだった。

四十人の客を乗せた観光バスは名所を巡り日本の伝統や風習、社会状況等を人々の興味に合わせて説明しながら旅を始めた。純朴な人達とすぐ打ち解けて、全員が旅を楽しんでいた。ガイド席の直ぐ横に坐っていた太った黒いおばさんは、息子と同年代の私に何くれとなく気を遣ってくれた。

その後ろでは良くしゃべり、遠慮なく苦情を言う三人がいた。

多数の外人団体となると、観光地での人員点呼や全体の統率は難しい。

「どうでしょうか皆さん、迷い子がでたら困るから、三つのグループに分けては」とバスの中で提案した。

「C'est une bonne idee ! 良い考えだ」

全員が賛成した。グループのリーダーには、このよく文句を言う三人を指名した。全員が賛成し、名誉の三人は誇らしげにこの役を引き受けた。

京都に着いたのは夕方だった。シャワーを浴びてロビーに降りると、数人の男女が夕方の街の散策に出たがっていた。

「よかったら、一緒に街を見物しませんか」

地下鉄で四条河原町に着いた。初めての日本の商店街は、彼らには珍しいものばかりだ。すっかり興奮して店先で佇んで眺める女達。何か面白い冒険はないかと、わくわくしている男達。自ずと男と女では興味が違う。

「それではここで二手に分かれて、一時間後に必ずここで逢うことにしましょう」

男三人を連れて、繁華街から露地に入ると、以前一度入ったことのある店があった。

「ここは比較的安くて、サケもあり、日本料理のつまみもありますよ」

ここは外人が喜びそうな炉端焼きの居酒屋で、珍しい酒のつまみが沢山有る。炉端の前に坐るとおでん、焼き鳥…ホテルや宿屋では出ない珍しいものばかりだ。見るもの全てが珍しいこの新しい経験に、三人はすっかり満足した。

……女性連中のことだから、珍しい店を眺めながら時間を忘れて、遅れてやってくるだろう、と思いながら露地を抜けて戻った。さっき別れた呉服屋の前で、五人の女達が手持ちぶさたに立っていた。

「おや、ちゃんと帰っていますね。街の散歩はどうでしたか、楽しかったですか」私が尋ねた。

わたし達はずっとここであなたが帰ってくるのを待っていたのよ。女達だけで怖くて歩けますか。わたし達を放って置かないでね、Mon fils(坊や)」太目のおばさんが優しく小言を言った。男達はそっぽを向いて、自分達だけ小さな冒険を楽しんだあとのうしろめたさをごまかしていた。

予定の十日間の観光日程を無事終了し、島民は島からもってきた手作りのお土産を私にプレゼントしてくれた。小さな貝殻に絵の具を塗って作った小舟、手縫いの端切れとサトウキビの芯で作った人形、どれも小学生並みの”傑作”だった。

「有り難う」

一人一人握手して別れを惜しんだ。

「今度は、わたしたちの美しい島へも是非来てね。待っています。A bien tot!」

「元気でね、グアダルーペでまた会いましょう Au revoir」

友人達は搭乗待合室へ消えていった。

 

UpBackHome

Copyright© Polyglot Plaza 1997. All Right Reserved.
Updated February 28, 2002