黄昏の散歩道

ある日、散歩を兼ねて近くにある川の対岸を自転車で通ると、海岸の埋め立て地の工場地帯にある道路の並木の反対側に、コンクリートの道があるのを見つけた。海を埋め立てる前にあった古い海岸の防波堤がそのまま残っている。ゆったりと四メートル程の幅があるが、通る人は殆ど見かけることもなく、また車の喧騒に悩まされることもない。産業道路の側らに格好の自分専用のサイクリング・ロードを見つけたのだ。

年金生活のわたしは、最近自家用車に乗るのをやめて、運動不足の解消をかねて自転車で走り回っている。車なしの生活で不便を感じるのは、毎週一回出かける生涯学習講座への通学である。市役所近くの我が家からは、この産業道路の近道を通ると、自転車で片道三十分と僅かな距離だ。

車道と反対方向には、休耕田の緑が一面に広がり、田畑では農夫が野良仕事に勤しんでいる田園風景も眺められる。少し遠巻きにして河口の堰を二つ超えると、緑地公園に着く。ここから学校までは十分とかからない。

今では夕方の散歩にも、二輪の愛車を駆り全身に風をなびかせて、この公園を往復するのが日課となった。ときおり近くに住む若い主婦が、犬を連れて散歩するのを見かける。お互いに、軽く目で挨拶を交わして、わたしは勢い良く通りすぎる。

夕暮れが迫ると、市街の彼方には夕焼け空が広がる。
夕立の後などは、晴れ渡った夕空に光輝燦爛と西方浄土のパノラマが展開する。わたしは、昨年秋に九十一歳で逝った母を想いながら、薄暗くなった黄昏の散歩道を走り抜ける。

2002/10/1 Tomingo

UpBackHome

Copyright© Polyglot Plaza 1997. All Right Reserved.
Updated December 5, 2002