豊橋の南に位置する渥美半島は、遠州灘と三河湾に囲まれ、風光明媚な半島である。この地はメロンや電照菊などの温室栽培農業で全国的に知られている。また大昔の縄文式時代の人骨・遺跡が多くみられ、日本人の祖先が黒潮にのって流れ着いたという柳田国男の日本人起源説にもあるように、日本人のルーツを知る上で歴史的にも重要な場所である。小学校唱歌としてよくしられている「椰子の実」の歌は、南方の見知らぬ島からこの半島に流れ着いたを椰子の実を海岸で見つけ、島崎藤村が情緒豊かに歌ったものである。渥美半島はこのように訪れる人に旅情を誘う所である。
遠州灘を望む海岸線はすばらしい景観を示し、大きな波が打ち寄せる浜ではサーフィンを楽しむ若者で賑わう。海岸線に沿って走るサイクリングロードは、真っ白な海岸と打ち寄せる波の向こうに、果てしなく広がる太平洋を望みサイクリングを満喫できる。半島の先端の伊良湖岬までは、豊橋方面からは自転車で約5時間ほどで、また知多半島からはフェリーだと40分で渡れるため、早春から晩秋にかけて観光客やアウトドア・スポーツの愛好家で賑わう。
連休の一日を、また思い切り自転車で走ろうと、知多半島の師崎からフェリーに乗った(大人+自転車料金:1630円)。始発の9時10分の大型フェリーには、休みを利用して早くからやってきたマイカーの人たちで一杯となる。なかには伊良湖岬の沖の神島へ渡り、釣りを楽しむ人もいる。短い船旅を満喫するため、甲板に上がり遠くに離れていく知多半島、日間賀島と篠島の景観を楽しむ。知多半島にある日本福祉大のOBのお嬢さん3人が乗り合わせていた。学生時代を過ごしたこの地を懐かしみ、連休を利用して東京方面からやってきて、渥美半島を訪ね、帰る途中とか。篠島を背景にしてスナップを一枚、気持ちの良い潮風に吹かれて、幸せいっぱいの良いポーズ。
伊良湖岬の港湾センターに下りると、椰子の実博物館がある。正面の岬の小高い丘の下を海岸線に沿って石畳の広い遊歩道がある。岬の先端には、真っ白な伊良湖岬灯台が立つ。沖には三島由紀夫の「潮騒」の舞台となった、神島が見える。伊良湖岬から神島まで4キロ米強。灯台の横の丘に登ると、沖を望む航路信号所の建物があり、伊良湖水道の航路を通る大型船の通過時間を示す、大きな一本針の時計が掛っており、面白い。遠州灘の方向に海岸線をたどると、恋路が浜に出る。丘の上にそびえる伊良湖ビューホテルが城のように美しく、映える。
さて、いよいよ丘の上に向うサイクリングロードに入る。国道沿いに走り、小高い丘の上を登るようにたどる。眼下に見渡す遠州灘の風景は抜群にすばらしい。くねくね走る山道を登り、今度は小さなトンネルを抜け、一気に下る。途中、藤村の歌碑の案内がある。恋路が浜から1キロ程のところにある日の出の石門を見物する。いよいよ海岸に沿ってまっすぐな、自転車道路が始まる。左手は、こんもりとした木の茂みが続き、平行して走る国道42号線の自動車道は、ここからは全く見えない。これは正に自転車天国である。ひたすら走る。
伊良湖フラワーパークで小休止、水分を補給する。自転車道に出たところで、恋路が浜で会ったサイクリストにばったり会う、渥美ロングビーチの道を聞き、別れを告げさらに走る。延々と続く海岸では、所々遠浅の海岸で投げ釣りを楽しむ人が見える。途中で途切れた自転車道から、国道に抜けしばらく走る。左右の国道のわきに温室栽培の農家が続く。電照菊の生産ではこの地は全国一の生産を行っており、秋から冬にかけて輝く電照風景はこの地方の風物詩になっているという。標識に従い、再び海岸沿の自転車道に入る。11時半、渥美サイクリングロードの若見駐輪場に着く。サーファーで賑わい、自転車道路まで占拠して寝そべっている者もいる。
赤羽根港に到ると自転車道路が終わり、国道に出る。しばらく行くと右手になつめ椰子の木並ぶ通りにさしかかる。右折して10分ほど走り坂を下ると、全国的に有名なサーフィンの名所、渥美ロングビーチに出る。海岸沿いの道は、行楽の自動車が埋め尽くしている。ここで休憩していると、先ほどのサイクリストとばったり、会う。3度目である。彼は隔週この渥美半島のサイクリングにやってくるという。がっちりした体格で、悠々と自転車を漕ぐ彼は、オーストラリアを半年かけて自転車で一周したという。
再び国道に戻り、田原町に抜ける高松一色の交差点を左折する。温室農場を左右に見ながら走る。豊橋方面のバイパスを抜ける。おおむね自転車用に道がついているので走りやすい。田原町谷熊の交差点までくると、中華料理の「王将」がある。いつものように、ここで遅い昼食とする。旨くて比較的安いのせいか、1時を過ぎているのに客で賑わっている。
1時半、さらに国道を走る。道が狭くなり、片隅を自動車に注意しながら走る。豊橋に抜けるバイパスに出てしばらく走る。おや、先を走る人に見覚えがある。先ほどのサイクリストである。4度目、またもや偶然の再会。この辺からの道は豊橋の市内を避けて通りたいと、一緒に走る。豊川橋では自動車道の横を走る自転車専用道を渡り、国道に抜ける。真っ直ぐ走り抜け、豊橋の港を通る防波堤をたどる。このあたりの海岸は、干潮時には潮干狩りの人で賑わうとか。豊川に帰る彼と別れ、蒲郡に向う。
蒲郡の海陽マリーナに着き、二階の喫茶Cruise Innで休憩。ヨットハーバーでは、人影もまばである。
…………
三河湾を一周するこのサイクリング・コースは、走行距離にして約130kmほどあるが、豊橋方面から渥美半島を抜け、フェリーで知多半島に抜ける逆のコースも良い。伊良湖岬―師崎間のフェリーの時刻、夕方明るいうちの帰宅時間を考慮する必要がある。
今日のコースは、ゆっくり走って出発点まで戻るのにちょうど12時間。途中会った人たちと楽しく話したりしたせいか、それほど疲れを感じない楽しい1日だった。
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参考資料 「愛知県の歴史散歩 下」 愛知県高等学校郷土史研究会 Link 渥美WEB 渥美半島の紹介 |
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